○長野市インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者支援に関する条例
令和5年8月30日長野市条例第29号
長野市インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者支援に関する条例
インターネットの普及は、私たちの社会、生活を大きく変えた。
様々な情報を一瞬にして入手できるとともに、自ら情報を発信することが容易になった。今やインターネットは、社会、生活になくてはならないものとなっている。こうした恩恵の一方で、弊害も発生している。
インターネットでは、匿名での情報発信、不特定多数の者と容易につながることが可能なことから、いじめ、プライバシーの侵害、誤った情報による中傷や名誉毀損が起きる等大きな社会問題となっている。また、インターネットの正しい活用、表現の自由に関する正しい認識がないと、意図せず加害者にもなる可能性がある。
このような状況のもと、人権を尊重する長野市において私たちは、あらゆる場において、表現の自由に配慮しながらも、誹謗中傷等の人権侵害のない社会づくりを進めなければならない。
そこで、インターネットによる誹謗中傷や差別、いじめ等の人権侵害を防止し、市民等が安心で安全な生活を送ることができるよう、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者等の支援等に関し、市の責務並びに市民等及び議会の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 誹謗中傷等 インターネット上において、悪口又はうそを言って、他人の名誉若しくは感情を傷つける表現又は人格、名誉、信用若しくは社会的評価を侵害する情報(以下この号において「侵害情報」という。)、侵害情報に該当する可能性のある情報若しくは当該者に著しい心理的、身体的若しくは経済的な負担を強いる情報を発信することをいう。
(2) 市民等 市内に居住し、通勤し、若しくは通学する者又は市内で活動を行う団体若しくは事業者をいう。
(3) 被害者等 誹謗中傷等により平穏な日常生活又は経済活動等を害され、又は害されるおそれのある市民等をいう。
(4) 行為者 誹謗中傷等を行った者をいう。
(5) インターネットリテラシー インターネットの利便性、危険性及び基本的なマナーを理解して、正しく情報を取捨選択し、適正な情報を発信し、並びにインターネット上のトラブルを回避して、インターネットを正しく活用する能力をいう。
(市の責務)
第3条 市は、被害者等及び行為者を発生させないための施策並びに被害者等を支援するための施策を推進しなければならない。
(市民等の役割)
第4条 市民等は、自らが行為者となることがないよう、インターネットリテラシーの向上に努めるとともに、被害者等が置かれている状況及び被害者等の支援の必要性についての理解を深めるよう努めるものとする。
(議会の役割)
第5条 議会及び議員は、この条例の趣旨を理解し、市民等の範となる行動に努めるものとする。
(連携協力)
第6条 市は、第3条の施策を円滑に推進するため、国、長野県、支援団体その他の関係機関と連携を図らなければならない。
(基本的施策)
第7条 市は、インターネット上で情報を発信する者の表現の自由に配慮しつつ、次に掲げる施策に取り組むものとする。
(1) 市民等の年齢、立場等に応じたインターネットリテラシーの向上に資する施策
(2) 被害者等の心理的負担の軽減を含めた相談支援体制の整備
(3) 行為者からの相談への対応
(4) 前3号に掲げるもののほか、被害者等及び行為者を発生させないための施策並びに被害者等を支援するための施策
(インターネットリテラシーの向上)
第8条 市は、市民等の年齢、立場等に応じたインターネットリテラシーを学ぶ機会を提供するため、研修会、講演会等の開催、教材等の情報提供その他の必要な施策を実施するものとする。
2 市は、青少年に対する前項の施策を実施するに当たっては、学校教育と連携するとともに、保護者の理解を得ながら取り組むよう努めるものとする。
(相談支援体制)
第9条 市は、被害者等の不安、被害者等に生じた不利益等を解消し、及び被害者等が抱える心理的負担を軽減するため、相談支援体制を整備するものとし、次に掲げる支援を行うものとする。
(1) 相談内容に応じた必要な情報の提供及び助言
(2) 専門的知識を有する者の紹介
(3) 前2号に掲げるもののほか、被害者等からの相談への対応として必要な支援
2 市は、前項の相談支援体制の整備に当たっては、相談しやすい環境づくりに努めるものとする。
3 市は、被害者等の相談支援に当たっては、必要と認める支援団体と連携して取り組むものとする。
4 市は、被害者等及び行為者からの相談のほか、インターネット上で発信した情報に関して不安を抱える者からの相談を受け、支援するものとする。
(市民等の理解の増進)
第10条 市は、誹謗中傷等の人権侵害の問題に関する市民等の理解を深めるため、広報その他の啓発活動を行うものとする。
附 則
この条例は、令和5年10月1日から施行する。